ずっと好きだ! 先生のこと
親は、「店が振るわないからどうしようもない!仕方ない」それしか言えない。
けれど返済していけないから、青年からお金をむしり取ることは止められない!
悪いと分かっていてもその場しのぎで、何としても店を続けようとした。
我が息子が苦しんでる事よりも、自分たちの方がもっと辛い!
それしか主張しなくなった。
何のために、誰のために生きてるのか……
働いても働いても、自分はおろか、家は一向に良くならない。
むしろどんどん悪化する一方。
分かっていながら店を手放さず、息子を巻き込んでまでの借金まみれの生活。
息子の稼ぎだけでは間に合わなくなり、両親はとうとう、アルバイトを決意する。
老体に鞭を打ち、家事全般は息子に押し付け、結局巻き込むのは止めなかった。
青年は苦しんで苦しんで、一時期、呼吸困難に陥ったり、眠りない夜が続く事もあった。
それでも、どんな思いをしていても譲れない思いがあった。
心は蝕まれてはいたけれど、科学への道は諦めきれず、通信教育で教員免許を取得し、科学の高校教諭となった。
仕事振りは寡黙で、元々真面目だったため評価は高かった。
ただ憎むべきは貧乏!お金さえあれば誰も苦しまなかった!
周囲からは「鈴木先生がそんな苦労をしていたなんて微塵も感じなかった」と言っている。
教師をしながら、何の苦労もせず、お金の有難みも知らず、親の脛をかじり、偉そうな口を利く生徒達を見ていると虫唾が走った。
それを何年も、何十年もそんな感情で生徒達と接して行くうち、いつしか科学者になる夢さえも忘れ、人を憎む事で自我を保った。
歪んだ感情は頂点に達し、その矛先は、大きなマンションに一人暮らしをし、親の金で悠々自適に暮らしているように見えた、一条徹、オレに向けられたそうだ。