クリスマスの日に、ツリーを見上げて



広場につくと、たくさんの人がいた。


そのほとんどはカップル。他は多分友達同士。


一人で来てるのは私だけ。


まあ、そりゃそうだよね。



ぼんやりと突っ立ってツリーを見上げる。


キラキラと次々に色が変わるツリーを見ていると、何もかもがどうでもよくなっている。


周りの人とか、寒さとか。そろそろ来るであろうテストとか。



ああ、きれいだなあ。




「あっ」



ブチッ



突然首を引っ張られたと思ったら、嫌な音がした。



「ご、ごめんなさい!!」



やっぱり...。さっきまできれいな編み目だったマフラーがバラバラになってる。



「あ、当たっちゃったみたいで、金具に引っかかってこんな...、ごめんなさい!!!!」



相手は少し年上かなってくらい。大学生...くらい?


少しかわいい顔をした、男の人だった。



「大丈夫ですよ!そちらはお怪我ありませんか?」



平静を装って笑顔で返す。


別に大丈夫なわけじゃないし、買ったばっかりだったから少し惜しいけど。


また買えばいい。


そこに怒って怒鳴り散らすほど私の心は狭くないし、きれいなツリーの前でそんなことしたくない。みっともないもの。



まあ今回に限ってはツリーに免じて許そう。



「大丈夫ですよ!そちらは?」


「私も大丈夫です!」



ああよかった。そう呟いて微笑んだ彼の笑顔はきっとホンモノ。


私の愛想笑いなんかと大違い。




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