クリスマスの日に、ツリーを見上げて
「では。このマフラー、結構古いので本当に大丈夫ですよ。そろそろ買い替えようと思ってたし。ちょうどよかったです。」
これ以上自分のみじめさを実感したくなくて、優しい彼に嘘をついて話を切り上げる。
もうツリーはいいかな、今年ももう見納めだ。
もう一度ツリーを見上げなおして、家に帰ろうと後ろに向く。
「あの!!」
歩き始めた瞬間、大きな声を出されて驚く。声の主は彼。
「どうしたんですか?」
「一人だったら、少しだけ僕に付き合ってくれませんか!?」
「え...?」
突然言われたことものだから、うまく返すことができない。
「あ、えと、いいお店知ってるんです。僕からのクリスマスプレゼントとしてもらってください」
私に不審者だと思われたとでも思ったのか、慌てて彼は言いつくろった。
さっき会ったばかりの人からクリスマスプレゼントなんて、絶対おかしい。
でも、彼はきっと嘘がつけない。
それが証拠に、「いいお店がある」って言った後に「しまった」という顔をした。
きっと、いいお店なんて知らないんだろう。
現に今も、手を組んで考え込んでいる。
頑張って過去の記憶から探そうとしてるんだろうな。
そこがとってもかわいく見えてしまう。
「いいですよ。行きましょう」
彼に追い打ちをかけるように声をかけたあたり、私は相当嫌な女だ。