【短】世界でたった一人、愛してはいけない『人』
ですが、ここ最近の神さまの忙しそうな様子を見て、神様を信じたいと思っています。
あれは過去のことです。
“今”の私は神さまのことが大好きです。
離れがたいと思うほどに。
猫のときの記憶に引きずられているのかもしれませんが、構いません。
だから──
「神さま」
「な、なーに?」
「そんなに怯えないでください。
私は、あなたと離れるつもりはありませんから」
「……どうしてルルちゃんは僕を許してくれるの?
どうして離れるつもりはない、なんて言えるの?」
まるで迷子の子どものように、不安げな表情を浮かべる神さま。
私は神さまへと近づくと、神さまを優しく抱きしめます。
慌てる神さまは珍しいです。
「あのですね、私の記憶は猫のときのものが大多数で、人間のときの記憶は薄っぺらい……言うなれば他人のもののようなんです。
ですので、私は神さまが無理やりこの世界に連れてきたというのもあまり実感はないんです。
あるのは、『神さまを好き』だという猫のときの強い気持ちだけ」
「……ルルちゃん、あれでも僕を好きだという態度だったんだね」
「失礼なことをおっしゃるのでしたら、嫌いになりますよ?」
クスリと笑うと、神さまはまた慌てます。
冗談ですよ、と笑えば、神さまはホッとしたのか大人しくなりました。