【短】世界でたった一人、愛してはいけない『人』
あ。
神さまは忙しかったのです。
だから私とも遊んでくれなくて──
さっきまで神さまがいらっしゃったところには、もう誰もいません。
私は、かなしくて、さみしくて、猫なのに、涙が出てきそうでした。
不意にふわりと体が浮き、私は少し期待をして、上を見上げました。
「ルルさま、私では役不足ですが、一緒にいましょう?
神さまも“もうすぐ”すべてを終わらせて遊んでくださいますから」
『……にゃーん』
悪いけれど、本当に期待ハズレでさらに気分は下がります。
私を抱きかかえた下僕の真っ黒な瞳に、私の真っ白な毛並みがうつっていました。
それが私と下僕、さらには私と神さまの“種族”の違いを表していて、胸が苦しくなります。
『にゃあ……』
「ルルさま……」
下僕は困ったように私の頭をおそるおそると優しくなでました。
それがまた、神さまと違った手で、なでかたで、ここには神さまがいないのだと、私はさらに悲しくなりました。
けれども、いつまでも下僕の手をわずらわせる訳にはいきません。
下僕にも仕事があって、それは私と遊ぶことではないからです。
下僕の手の中を抜け出すと、私は自分の寝床へ向かいました。
そこは神さまのベッド。
神さまのかおりがたくさんで、私は幸せな気分になれるの。
実は後ろから、私に何かを言う下僕の姿があったのだけれど、私は神さまのベッドへ行くことで頭がいっぱいで、聞こえていませんでした。
「ルルさまー!
変なことは考えないでくださいねー!!!
私が怒られてしまいますからー!!!」