【短】世界でたった一人、愛してはいけない『人』

我慢できずに男の腕から抜け出しました。

急いで距離をとります。


『う゛う゛う゛』

「そんなに怒るなって。もうさわんねぇよ」


両手を上げて参ったなんてポーズをするけれど、信じられるわけがありません。


『にゃー!』

「だけど飯くらいは食えよ。
 アンタ丸一日は寝ていたんだ。
 腹、減ってんだろ?」


男はそう言って私の目の前にミルクを置きました。


な、なによ。

優しいところもあるじゃない。

だからといって、すぐに飲むわけもないけれど!


「アンタに餓死でもされたら、たまったもんじゃねえんだがな。
 ……飲んでくれないか?」


男は困った表情を浮かべ、ミルクを一舐め。

安全だと言いたいらしい。

私はゆっくりとミルクに近づき、おそるおそると舐めてみます。

うん、特に変なことは起きません。

< 9 / 32 >

この作品のキーワード

この作品をシェア

pagetop