【短】世界でたった一人、愛してはいけない『人』
我慢できずに男の腕から抜け出しました。
急いで距離をとります。
『う゛う゛う゛』
「そんなに怒るなって。もうさわんねぇよ」
両手を上げて参ったなんてポーズをするけれど、信じられるわけがありません。
『にゃー!』
「だけど飯くらいは食えよ。
アンタ丸一日は寝ていたんだ。
腹、減ってんだろ?」
男はそう言って私の目の前にミルクを置きました。
な、なによ。
優しいところもあるじゃない。
だからといって、すぐに飲むわけもないけれど!
「アンタに餓死でもされたら、たまったもんじゃねえんだがな。
……飲んでくれないか?」
男は困った表情を浮かべ、ミルクを一舐め。
安全だと言いたいらしい。
私はゆっくりとミルクに近づき、おそるおそると舐めてみます。
うん、特に変なことは起きません。