血も涙もない。
目覚め
目覚めると、僕は島にいた。
 今日はやけに目覚ましが鳴ると思っていたら、耳元で真っ赤な鳥が鳴いていた。
 オレンジ色の太陽が眩しくて、僕は茶色い地面から、そっと起き上がった。
 背の高い樹木が、うっそうと生い茂って僕を見下ろしている。地面は、こげ茶色で湿っている。見上げると、木と木の間から、でかい太陽が、さんさん照っている。葉っぱと葉っぱが重なって、木の下は若干暗めであるくせに、太陽が低すぎるせいで、樹木が途切れたところは、やたら眩しいのだ。
 キーキーとか、チョンチョンとか、名前特定不可能な動物の鳴き声が、四方八方からしている。
 人は、いない。僕だけだ。
 僕は、そろそろと体を動かして、立ち上がった。
 地面に寝そべっていた割には、体は痛くない。
土が軟らかいせいだろう。意外と寝心地はいい。
 熱帯雨林、とでもいうのだろうか。
 スリッパは、歩くにはこの上なくふさわしくない格好で、ペタペタして、気持ち悪い。
 結局僕は、ものの5分もしないうちにスリッパを脱ぎ捨てることになった。
 僕は、どうしてここにいるのだろう。
 それにしても、暖かい島でよかった。
 青いストライプ柄のパジャマは、よれよれで、すーすーと風通しがよくて、気持ちいい。
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