血も涙もない。
すぐ傍で、何かの気配がした。
 どろっとした感触がして、パジャマの袖の裾が、濡れる。
 はーっという不気味な息遣いと共に、テレビなどで知っている唸り声が、すぐ耳元でした。
 僕は、身体じゅうの毛穴が鳥肌立つのを感じた。
 パジャマを濡らしたものが、そいつのよだれであることに、気づくまでにそんな時間はかからなかった。
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