血も涙もない。
遭遇
 突然、静かになった。
 僕は、はっと顔を上げる。すぐ傍で聞こえていた動物のいろんな声が、鳴り止んだ。
 遠くではあいかわらずぴーちくさえずっているが、少なくとも半径数メートル以内では、生き物の声がぴたりととまった。
 何だろう。
 嫌な予感がする。
 木いちごを持ったままの手のひらが、じっとり汗ばむ。
 胃のあたりがきりきりする。
 
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