甘い魔法にかけられて
あえて名前は出さないまでも
何度も連呼する【KY】というフレーズを
覚えてしまった奥さん

「柚ちゃん、じゃあそのKYさんと仲良くする方法を考えなきゃね」

「違いますよ奥さん!仲良くなんてしなくて良いんです、だって拡販の為の出向だからそのうち居なくなるし・・・KYなんだから心にシャッター閉めて対応します」

いつになく声を張って
一人の人のことを雄弁に話す様子に

「実は恋のチャンスかもよ」

「文具メーカーさんならゃんとしてるわよ」

とか...奥さんの相槌は
全て恋バナへと向かっていた

結局のところ
「もっと大人の対応をしましょうね」
などと脳天気な結論で

後片付けが終わると
老夫婦に見送られてアパートへ戻った

今日が週末でないことを
恨めしく思いながら

顔も見ていないKYと
できるだけ距離を置く

子供じみた作戦を立て
ベッドに潜り込んだ
< 10 / 90 >

この作品をシェア

pagetop