甘い魔法にかけられて
「ほら、柚ちゃん困ってるでしょ?」

小宮さんの助け舟にも
さすがKYだけあって

「だって歓迎会なんだから〜」

一向に動かないKY
この状態から抜け出したい一心で

テーブル上の伏せられていたコップを
手に取ると黙ったまま突き出した

「お〜良いねぇ」

冷たいビールが
コポコポと注がれると
冷たさが指から伝わる

「ほら、ググッと〜」

KYの声に少し苛立ちを覚えながら

「柚ちゃん無理しないのよ」

三上さんの声を遠くに聞きながら

泡へと口を付けゴクンと喉を鳴らした


「お〜上村さん、やっぱこうでなくちゃ〜」


口の中に広がる苦味に
渋い顔になるも

これ以上ここに留まられても困るから
目の前の2人へ手を差し出し

「お次へどうぞ」

それだけ言うと
また俯いた
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