甘い魔法にかけられて
「いや、あの・・・自分で脱いだ?え?うそ」

胃袋に収まったKYモーニングが
逆流しそうなほどの嗚咽感がハンパない

「うそじゃないよ、ちゃんと介抱してあげたんだから、そこはありがとうじゃない?」

ラフに髪をおろした
隙間から見える切れ長の目が笑った

・・・誰か今すぐここに穴を掘って

・・・そしたらすぐに飛び込むから

酔って覚えてないとはいえ
自分の行動に悲壮感しかない



「・・・が・・・ございます」

「え?」

「ありがとう・・・ます」

「なんて?」
耳に手を当て聞こえないと催促する

「ありがとうございます」

泣き出しそうな顔を上げ
KYを見ると
吹き出しそうな顔つきで

「どういたしまして~」
ニッコリ笑顔を向けた

こちらの気分など関係ない
軽い返事に背筋の力が抜ける

「休みだし・・・今日は何する?どっか出掛ける?」

「いえ、服が乾き次第帰ります」

・・・この人何??


「せっかくなのに?」

・・・せっかくってなんだ?

「・・・結構です」

「いいお天気だし・・・楽しいよ?」

・・・お天気に何の関係がある?

「・・・結構です」
くだらないやり取りを繰り返すうちに


ピーピーピーピー

救世主のような
洗濯機の電子音が聞こえた


もう一度寝室を借りて
着替える

「あの・・・Tシャツは洗って返しますね」

「いいよ、置いといて」

「いいえ、色々申し訳ないので・・・」

謙虚な言葉を発したことを
次の瞬間盛大に後悔することになった

「じゃあ、一宿一飯の恩義として・・・今度デートすること、いいね?」

「・・・え?」

「申し訳ないんだろ?じゃあ決まりね」

目にかかる前髪を掻き上げながら
ニッコリと笑う白い歯に

不覚にも頷いてしまった

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