甘い魔法にかけられて
ぼんやり目を覚ますと
壁の時計は14時を指していた

・・・発注どうしたかな

気になるのは
デスクの付箋たち

携帯の電源を入れると
妙に短いベルが何度も鳴る

「何の着信音だっけ?」

アイコンマークを探すと

メッセージの右肩に30と赤丸

恐る恐る開くと

(大丈夫か)
(熱はないか)
(お腹減ってないか?)
(病院に行ったか)

全てKYからのショートメールだった

・・・アドレス知らなくてもこれなら送れるか

彼女のことを知らなければ
とても嬉しいメールのはず

いや・・・

彼女のことを知らないのなら

・・・欠勤もしてないか(笑)

なんだか自分の馬鹿さ加減がおかしくて
一人でコロコロ笑った

・・・返信しなきゃね

(ご心配ありがとうございます。もう大丈夫です)

送信ボタンを押した

ピンポーン

「え?」

同じタイミングでチャイムが鳴る

寝起きのボサボサ頭では
居留守確定なのに

ドンドンドン
「柚ちゃ~ん、矢野です。。柚ちゃ~ん」

アパートの玄関ドアを振動させ
声を張ったKY

「ご、ご近所の迷惑に・・・」

慌てて玄関のドアを開けると

「あ~良かった生きてたね」

爆発髪の毛のTシャツ半パン姿に驚く様子もなく
身体のことだけ心配しているよう

「あ、あの、ご近所迷惑になりますから静かにお願いします。今、メール送りました。もう大丈夫ですからどうぞお引き取り下さい」

チェーンロックの隙間から
早口で伝えると

ドアを閉めた
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