甘い魔法にかけられて
「何か変だよね?柚ちゃん・・・全然目も合わせてくれないし、僕なにかしたかな?」

間近で聞こえたのは
私の態度の理由が知りたいという
KYの声だった

本当は聞きたい
あの人はKYの何なのか?
どうしてここまで来たのか?
“航平さん”と呼んで腕を絡ませる理由も
あの後どこへ行ったのかも

・・・だけど

私にはそれを聞く資格がない

だって・・・

私はKYの彼女じゃないから

私が気になっているだけで
KYは何とも思ってないかもしれない

それなのに図々しくなんてなれない

頭を巡るのは壁を作りたい・・・
ただそれだけだった

「・・・なにもありません」

「ん?」

「だから、私が変であろうと・・・あなたには関係ありません」

低く足元へ吐き出した声に
息を飲むKYが伸ばそうとした手を
パチンと払うと

走って事務所へ戻った


「柚ちゃんどうかした?」

事務所へ走り込んだ私を
小宮さんが気にかけてくれたのに

「いえ、大丈夫です」

もう小宮さんの顔も見れなくなっていた
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