甘い魔法にかけられて
「・・・なっ、なにかおかしな事言いました?」

テンパり過ぎて
自分が吐き出したのが
大いなるヤキモチだということに
全く気付けず

目の前で笑っているKYに
沸々と怒りが込み上げる

それを察知したのか

急に真顔になったKYは

「ごめん、ごめん・・・」

胡座をかいた足を正座に戻して
真っ直ぐ私を見た

「先ずは、優里亜さんのこと説明するね」

KYの勤める白洋堂の受付をしている
白石優里亜さんは
隣県の文房具卸会社の社長の娘さん

「日本文房具って会社知らない?」

「知ってます」

何度か名前を聞いたことがある程度だけれど・・・

組合報にコラムが掲載されているのを
読んだ記憶がある

「白石社長から縁談を申し込まれたことがあって・・・」

「え?」

・・・それって私が考えるより凄いじゃん

「じゃあ彼女というより婚約者さんってことですね」

「違うよ!だから〜この前も言ったけど彼女は居ないって」

「は?」
理解に苦しみ過ぎて
間違いなく再び阿呆面になっているはず

「それは三年も前に断った話、で、今は優里亜さんは僕の同期で隣の課の課長と婚約中」

「え?でも・・・それなら尚更」
携帯もメールも返事がないと
乗り込んでくる理由が分からない

・・・それに腕を絡ませたのは見間違いなんかじゃない


「それはね・・・」

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