甘い魔法にかけられて
ピピピピピピ

いつもより早く設定したアラーム
迎えの時間までたっぷり取って

念入りに支度する

・・・名目はどうであれデートだよね

嬉しすぎて頬が緩みっぱなし

約束の時間ピッタリに

【前に車停めて待ってるよ】

届いたメールを確認すると
跳ねるように家を出た

伊達メガネを着けずに
助手席へ乗り込むと

「あれ?柚ちゃんメガネ・・・」

驚くKYに笑顔だけ向けた

「レンタカーですか?」

「あ、この車?親父の・・・さっき借りてきた」

・・・さっき?

「矢野さんってここの出身ですか?」

出向でやって来たから
てっきり県外の人だと思っていた

「そうだよ、生まれも育ちもここ」

「へぇ」

パズルのピースを埋めるように
車の中で沢山お喋りが続き

着いた場所は

「どうだい?気持ちいい所だろ?」

・・・えっと見渡す限り山ですが

「・・・はい」

「カルスト地形、牧場もあるから後で行ってみよう」

・・・確かに牧草を食べる牛が沢山そして岩石少々

・・・牧場って…何か楽しいことありましたっけ?

丸太のベンチに腰掛けながら
心地よい風に吹かれ

徐々に気持ちもリラックスするのを感じた
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