甘い魔法にかけられて
「ね~柚ちゃ~ん」

背中に大きな太陽を背負って
手を振るKY

・・・だから声大きいってば

腹の底から声出しするような
応援団に入っていたに違いない

少しの偏見を持つ自分


KYは更に大きな声で

「柚ちゃん、僕と付き合って下さ~い」

・・・は?は?は?

「返事は??へ・ん・じ~」

犬の散歩にウォーキング中の人
バドミントンするカップルが一斉にこちらを見る

・・・アワワワワワ

口に人差し指を当てながら
小走りでKYに近づくと

「やめて下さい、皆が見てるでしょ?」

「あれ?ホントだね~全然気にならなかった」

頭を掻きながら笑うKYに
釣られて頰が緩んだ

「柚ちゃん、付き合ってください」

「・・・」

「柚ちゃんお願いします」

「・・・はい」

耳まで真っ赤になりながら
小さく答えた

「よっしゃ~」

またも大声でガッツポーズのKYに
注目していた周りの人達は

何故か拍手

・・・公開処刑ってこんなもんでしょうか

・・・今すぐ穴を掘りましょう

恥ずかしくて俯く私を
すっぽり抱きしめたKY

微かに香るコロンの匂いを
ゆっくり吸い込むと
ホッとして落ち着いて
まるで“魔法”にかかったよう

更に・・・
頭の上から

「ありがとう」

柔らかな声が降った
< 59 / 90 >

この作品をシェア

pagetop