甘い魔法にかけられて



年度始めの営業会議は
前期目標として販路の拡大が挙げられた
一県に2、3軒ある文房具卸問屋に拠点を構る

営業一課の担当県の中に
実家のある県も含まれていた


・・・チャンス到来


長い間温めてきた想いを
伝えるチャンス

我先にマジックで目的の県を赤丸で囲み
中央に名前を書き込むと

会社が用意してくれた
ウイークリーマンションの契約に出かけた

・・・と、その前に

実家に立ち寄って
母に想いを伝えた

「よく我慢したわよね」
フフフと笑う母に頑張れとエールを貰う

更にマンションを教えると
「そこって柚ちゃんのアパートの隣よ」

願ってもない情報に逸る気持ちが抑えられず

「壮大なる捕獲計画発動」

戦隊モノを真似て家を飛び出した


迷いなく立ち寄ったのは
彼女の勤める卸問屋

もちろん彼女が終業後の遅い時間

「それで?ご両親はなんて?」

「“よく我慢したわよね”って笑ってました
我ながら良く頑張ったかなと」

「まぁ、決めるのは上村さん本人だから
儂等がどうこう言えんが‥
今時ピュアなお嬢さんだから
くれぐれも 傷付けんように
暴走だけは止めてくれよ」

「はい、そこは慎重に攻めるつもりです」

自称【コミュ障】の彼女を攻める為に
周りをガチガチに固めてから
実行に移した
< 72 / 90 >

この作品をシェア

pagetop