幸せのカタチ〜Fleeting memories〜
「でもまぁなんか話しかけづらくて、もう1週間くらい経つけど、多分今日のことでようやく向こうは俺のことに気づいたぐらいかな?」
俺は笑いながら言った。
すると昇太はキョトンとした顔で俺に向かって言ってきた。
「いやいや!気付いてない訳ないでしょ。そんなのあの人だってもっと前から気づいてるって!」
俺は『それはないだろー』と思いながら冗談交じりに答えた。
「どっちにしろ俺は今日まで奥野さんの前で話す場面なんてなかったんだし、向こうも気付いてたんなら声くらいかけるっしょ?まぁ別にいいけどさぁー」
俺は徐々に話を終わらせる方向に持って行こうとした。
「んで?まぁとりあえず今回のことでお互い認識したのは確定したんだし、そっからなんかあったのかよ?」
昇太は話を続けようとノリノリだったが、もう話すこともこれ以上はなく、俺は冷静に返した。
「いや、授業始まる前だったし、特になんにもなく、そのまま終わって今に至る!って感じ」
俺の言葉を聞いて昇太は少し残念そうだったが、これ以上話を膨らませても今は意味がないと悟ったのか
「そうか!まっ!今後が楽しみだな!」
昇太は少し不敵な笑みを浮かべて言い放った。
「まぁな」
俺も特に意味はなく同調した。
しかし今思えばこのやり取りがキッカケで、これから昇太と俺との夜の「語り合い」が増えていくことを俺たちはまだ知らなかった。