幸せのカタチ〜Fleeting memories〜
絶望からか嫌な光景しか思いつかない。
『みんなの前ってことは奥野さんの前で恥をかくのか?なんかそれは嫌だー!』
するとここで俺の頭がまたまた冴え渡る。
『ん?奥野さん?あっ!そうだ奥野さんなら家も近いし、なんなら直接家にまで行けば!』
と思ったがふと現実に帰る。
『いや、直接家に行くのはダメだろ。もし奥野さんが家にいなかったとして家族の誰かが出てきたら…俺のことなんて知らねーハズだし。かといって連絡先なんて知らねーし!……あっ!』
俺はここで思い切った行動を思いつく。
『そうだ!昇太なら奥野さんの連絡先を知ってるハズ!昇太なら聞きやすいし…』
昇太と奥野さん。
2人の関係を知らない訳もない俺が過去のことを考える間もなく行動に移していた。
「プルルルル、プルルルル、ガチャ、もしもし」
昇太はすぐに電話に出てくれた。
「もしもし!昇太!?ちょっと頼みがあるんだけど…」
昇太は眠そうにしていたが目を覚ましたように答えてくれた。
「何?なんかあった?」
俺からの頼み事なんて滅多にしたことはなく、多分驚いて目を覚ましたのだろう。
俺は急いでいた為、要件を端的に伝えた。
「塾の夏期講習の課題の範囲がわからなくて、昇太に奥野さんに聞いてもらいたいんだ!現代文の課題の範囲!」
昇太は奥野さんという名前を聞いても動じずにアッサリ答えてくれた。
「オッケー!一回連絡してみるわ!」
電話を切り、昇太の報告を待った。
今思えば何故この時に連絡先を教えてもらわなかったのだろうかと不思議に思う。
多分それだけ俺はパニック状態だったのだろう。
祈るように待つこと約15分。
昇太からメールが来た。
『現代文の課題はP158〜P180まで、P256〜P280まで、P303〜P351までだよー』
昇太からのメールは恐らく奥野さんから来たメールを転送したものだった。
『うわっ!危ね!全然違うじゃん!これマジでヤバイやつだったわ』
まさに九死に一生を得た感覚だった。
『サンキュー!ホント助かった!』
昇太にメールを返した。
すると昇太からすぐにメールが来た。
『てかそもそも自分で聞けばよかったんじゃね?』
俺は昇太からのメールを見てすぐに返信した。
『たしかにー!でも俺連絡先知らなかったしー。まぁ結果オーライって事で!とにかくマジで助かったわー!』
この時は助かった喜びしか頭になかった。
でもこれが事の始まりだった。