幸せのカタチ〜Fleeting memories〜
塾が終わるといつもは友達と雑談をしながら自転車置き場へ向かうのだが、今日は違う。
俺はそそくさと塾を後にした。
バス停には既に何人か並んでいる。
『まだ大丈夫そうだな』
俺はホッとした。
塾終わりの時間帯のバスは激戦区だ。
駅近ということもあり、仕事帰りのサラリーマンや学生がこぞって家路につく。
俺はとにかくバスでは座席に座りたいという気持ちがあり、座れないのなら一本バスを見送ってもいいと考える程、座席への執着心は高かった。
座っていれば多少混んでいても気にすることなく過ごせたからだ。
バス停が見えてくると今はまだ10人程度しか並んでいない。
『これならまだ全然座席圏内だ。』
そう思い足早にバス停へ向かった。
バスが来るまでまだ20分くらいあるが、構わず俺は最後尾に並んだ。
これがバスが来る5分前にでもなれば長蛇の列になり、その最後尾ではバスに乗れるのかどうかさえ心配になる程の人数になる。
並び始めてから5分が経過し、既に俺の後ろには人が10人以上並んでいる。
しかもどんどんその数は増えていく。
俺は音楽を聴きながらバスが来るのを待っていた。
すると突然背中を叩かれた。
トントンーーー
振り向くとそこには奥野さんが笑顔で立っていた。