幸せのカタチ〜Fleeting memories〜
「実はこの前、奥野さんと塾の帰りがたまたま一緒になって…」
俺は塾の帰りに奥野さんと一緒になれたこと、メールを続けていること、ここ最近で起こった出来事を話した。
昇太は黙って聞き、一通り俺が話し終えると腕を組みながら少し考えて言った。
「涼は奥野さんのことどう思ってんの?好きなの?」
昇太はストレートに聞いてきた。
俺はびっくりして、思わず「えっ!?」と声を詰まらせた。
「いやーなんか話してる時の涼がすごく幸せそうでさー。てゆうか楽しそう?な感じがしてて、こういうのって奥野さんが好きだから色々考えちゃうんじゃないの?」
俺はハッとした。
考えてみれば好きという感情を意識したことはなかった。
ただ今昇太に言われて、ドキドキしている自分がいる。
ただ色々な考えや思いがあり、素直になれていなかった。
「好き…なのかな?」
自分でも自信が持てない。
俺の中で奥野さんを好きになってはいけないという気持ちがどこかにあった。
しかしそれを昇太に言うことはできなかった。
「好きか嫌いかで言えば好きなんじゃねーの?ちょっとぐらい本気で考えてみ!」
昇太に背中を押されて、俺はカァーっと顔が赤くなった。
結局この日は時間も遅かったので、解散した。
しかし昇太に相談しようと思っていたのが結果的に悩みを増やすことになってしまった。
『だって奥野さんは昇太のことを…』
俺はこの引っ掛かりがずっと解けないでいた。