甘え上手でイジワルで
青天の霹靂
駒川 彩未。もうすぐ三十歳。
小さな精密機器メーカーから始まり、ここ十年で多方面に事業を展開したキタガワホールディングスで秘書をしている。
秘書は、新卒で採用されることの少ない仕事だ。
けれど、私はこのキタガワに秘書として採用された。
それには少し事情もあるのだけど…。
他の秘書達は、他部署で数年間の経験を積んでから、秘書室に引き抜かれた、いわば選り抜きの人材。
優秀な彼らに追いつくために、私は秘書室に入った時から、努力に努力を重ねてきた。
無我夢中で毎日の仕事をして、仲間に秘書として認められ頼られるようになったのは、ここ数年のこと。
やっと仕事の楽しさもわかってきて、ひょっとしたら秘書が私の天職なんじゃないかって思ったりして。
冬の朝は、空気が澄んでいる。
今日も私は秘書室に一番乗りする。コートとマフラーをロッカーにしまって、室内の掃除を軽く済ませると、パソコンを立ち上げる。
ひとりの秘書室の静けさは、一日のやる気を呼び起こすみたい。
今日も頑張ろう!
「……なに……これ……」
ところが、パソコンに浮かんだ文字を見て、私はそれ以上の言葉をなくした。
そこにあったのは、「異動」の二文字。
十二月十一日、この日を以て、私こと、駒川 彩未は秘書室から新設部署に異動させられたのだった。
小さな精密機器メーカーから始まり、ここ十年で多方面に事業を展開したキタガワホールディングスで秘書をしている。
秘書は、新卒で採用されることの少ない仕事だ。
けれど、私はこのキタガワに秘書として採用された。
それには少し事情もあるのだけど…。
他の秘書達は、他部署で数年間の経験を積んでから、秘書室に引き抜かれた、いわば選り抜きの人材。
優秀な彼らに追いつくために、私は秘書室に入った時から、努力に努力を重ねてきた。
無我夢中で毎日の仕事をして、仲間に秘書として認められ頼られるようになったのは、ここ数年のこと。
やっと仕事の楽しさもわかってきて、ひょっとしたら秘書が私の天職なんじゃないかって思ったりして。
冬の朝は、空気が澄んでいる。
今日も私は秘書室に一番乗りする。コートとマフラーをロッカーにしまって、室内の掃除を軽く済ませると、パソコンを立ち上げる。
ひとりの秘書室の静けさは、一日のやる気を呼び起こすみたい。
今日も頑張ろう!
「……なに……これ……」
ところが、パソコンに浮かんだ文字を見て、私はそれ以上の言葉をなくした。
そこにあったのは、「異動」の二文字。
十二月十一日、この日を以て、私こと、駒川 彩未は秘書室から新設部署に異動させられたのだった。
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