GATHER!!
「本当に今日はついてない…」
署長に叱られ、署長室から出てきた男は、ヒース・ウィルソン。
一応刑事だが、彼に正義などという言葉はまるで当てはまらない。
当てはまる言葉があるとすれば、『脱力』といったところだろうか。常にだるそうにしていて、やる気など微塵も感じられない。
昨日も仕事をサボって友人と酒を飲んでいたので、二日酔いでやる気ゼロ。
机の上には書類がどっさり積まれているので、おそらくサボりの常習犯なのだろう。見事な紙の山は、減るということを知らず――
「刑事、新しい書類です」
…また増えた。
「ジャスミンさん、この書類…」
自分の机を見て、ヒースは書類を渡した女性に問う。
「刑事の自業自得です、今日中に片付けてください。その書類が私の机まで侵入してきてるので仕事がしづらいんです。あと、今の書類は連続殺人についての新しい資料なので必ず目を通しておいてください。それと、『ジャスミンさん』と呼ぶの、いい加減やめてくれませんか?私のことは『モンレー巡査』とお呼びくださいと言ったはずですが」
「あー、一度に言われても困るんだが…」
「なら、ひとつひとつ丁寧に言いましょうか?刑事の頭でも理解できるように、ゆっくりと、時間をかけて」
笑顔でジャスミンが切り返す。
だが、彼女の目は笑っていない。
「…遠慮しておこう。君の小言は署長のよりずっと身にこたえるからな。もっとも、署長の小言も耐えられるものではないが」