GATHER!!
「明るい月は、その光で白と黒とをはっきり映し出す。この世界も同じ。光と影、正義と悪。はっきり二つに別れてる」
少年は、深紅の瞳を月へと戻す。
男は、静かに口を開いた。
「なら、俺は影だな。そして悪だ」
少年は振り向かない。
男は続けた。
「光や正義など、馬鹿げているとは思わないか?そんなもの、世間一般の価値観であって、俺には関係ない。皆が人殺しを正義と言うのならそれは正義になるが、そんな不安定でくだらない物を信じる暇があったら、俺は酒でも飲んで寝ている」
男が一旦言葉を切る。
黙って聞いていた少年が、男を促した。
「そして、正義以外は悪だ。光の当たらないところは影だ。皆は俺の事を悪だの何だの言うだろうさ。だが、俺は別に否定はしない。俺が正義を信じず、光を嫌っているのは事実だからな。どうせ悪なら、どうせ影なら、その道を純粋に突き進むのが美学とは思わないか?まあ、たまには光を浴びるのもいいことだが」
少年は、無言だった。
「悪いな、始めて会った君に言うような台詞じゃない」
少年の無言を否定と受け取ったのか、男は謝った。
しかし少年は、彼に多大なる興味を持っていた。この男の持論は、少年を大いに惹(ヒ)きつけた。世の中の正義が、光が全てだという今の大人達とは掛け離れているこの男に、なぜか親近感がわいた。