【完】溺愛フラグが立ちました。
こんなとき、非常電源かなにかで電気や暖房は動いたりしないのだろうか。なんて考えていると、隣から声をかけられた。
あのイケメンさんに。
「よく落ち着いていられますね?」
「……あなたこそ」
「私は、毎日トラブルに巻き込まれるような暮らしをしていますので」
「え?」
「不謹慎かもしれませんが、少しわくわくしています。こんな経験なかなかできたものじゃないですから。極めて異例なんじゃないでしょうか、このシチュエーションは」
たしかに、そうかもしれないけれど。
この状況を冷静な目でみることはできても、私には楽しむって考えはない。
それに比べてこの人は、意外に子供っぽい一面のある人だなぁ。
見た目はバリバリ働いていそうなお兄さんなのに。
車内がまだ明るかったときにちらりと見えた、手首に巻かれた腕時計がこれまた高そうだった。
それでいて気取った雰囲気がない、柔らかい物腰の人。
なんだかちょっとミステリアスかも……。
「なによりも貴女みたいな人とこんな体験ができて、美味しいです」
――え?
「このまま閉じ込められていたいくらいだ」
(き……聞き間違い、だよね?)
いま、【閉じ込められていたい】なんて聞こえた気がしたけれど。
あり得ないよね!?