【完】溺愛フラグが立ちました。



「よろしければ、貴女のお名前も伺っていいですか?」

「私は……寄葉知冬(よりは ちふゆ)です」


 すると、トノセさんは黙ってしまった。

 聞き取れなかったのかな?


 私の名前も大概珍しいもんな。


 どうしよう。どうやって会話を続ければ……。


「どんな字を?」


 ……助かった。

 リードしてもらえないと話せない自分に呆れてしまう。


「えっと。近くに寄るの『寄』に、葉っぱの『葉』。知覚の『知』に春夏秋冬の『冬』です」


 この説明、何回してきたかな。もしも名前が『山田花子』なら、字のことまで聞かれないだろうに。

 いや、花子のハナはどんなハナですかってことくらいは聞かれるかな。


「知冬さん。素敵なお名前ですね」

「えっ……そ、そうですか」


 そんなことを言われたのは初めてだから戸惑ってしまう。

 ついでにイケメンさんから下の名前で呼ばれたインパクトが強すぎてうろたえる。


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