【完】溺愛フラグが立ちました。


「聞いてみたいものです」

「え?」

「知冬さんの関西弁」

「……ふ、普通ですよ?」

「方言って可愛いですよね。グッときちゃいます」


(ぐっとくる……!?)


 さらっとそんなことを言えちゃうなんてさすがイケメンさんだ。

 どうやらイケメンさんは、どの次元であれど、それはそれは罪深い存在らしい。


 さっきから胸がドキドキして仕方ないもん。


「ご実家には、どのくらい滞在なさるんですか?」

「え……」

「ああ。すみません。出逢ったばかりなのに、プライベートなことを聞いてしまって」

「いえ。そんなことは……ないです」


 どうしてだろう。自分のことをトノセさんに話すのが嫌じゃない。

 むしろ、ペラペラと話してしまいそうになる。


 私の話なんて聞いてどうするんだろう。

 退屈じゃないかな……?


「だったら知冬さんのこと、私にもっと教えてくれますか?」


――!!


「……なんて。ただ、偶然居合わせただけの私に言われても困りますよね?」


 こんなとき、なんて答えればいいの?

 乙女ゲームなら三つの選択肢が目の前に出てきてくれるのに。現実はそうもいかない。

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