【完】溺愛フラグが立ちました。
「……っくしゅん、」
気づけば時間がだいぶ経過していて、車内は冷えてきた。
コートを手に取り膝にかけようと考えた、そのとき。
「よかったら使って下さい」
トノセさんがそっとコートをかけてくれた。
「えぇ……?」
「あったかいでしょ? 大きいから」
「それは、そうですが。これだとトノセさんがっ……」
「私は東北育ちなので。寒さに強いんですよ」
「でも……」
「グリーン車なら、言えばブランケットくらい貸してもらえますがねぇ。ダメ元で聞いてみましょうか」
「そ、そんな。十分あたたかいです!……ありがとうございます」
トノセさんは、グリーン車に乗ることがあるのかな。入ったことないや。
そんな私は、いつもは自由席の切符を買う。今日はちょっと奮発して指定席なだけで。
「ねえ、知冬さん」
「はいっ」
「それでもまだ寒いなら。私にもっと近づいてきて下さいね?」