【完】溺愛フラグが立ちました。



 停止から一時間ほどたった。

 未だ出発の目処などは知らされていない。


 もう泣いている子はいない。眠ってしまったのだろうか。


 長期戦になるかもしれない。

 トノセさん、平気そうにしてるけど絶対寒いよね。

 今更コートを返しても、気を使って受け取ってくれない気がする。

 私のコートは短い。そして薄い。

 冬の寒さを完全に舐めていた。

 もっと着込んでこればよかった。


 ……こうなったら、もうこれしかないのかもしれない。


「あの、トノセさん」

「はい」

「……入りませんか」

「え?」

「コート。いっしょに使いましょう」

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