【完】溺愛フラグが立ちました。
「あたたかいですね? 知冬さん」
「……そうですね」
二人がけシートで、トノセさんと寄り添う。
あたたかい通り越して……もはや熱い。毛穴という毛穴から汗が湧き出てきそう。
こんなにも誰かのぬくもりを感じたのって赤ちゃんの頃に抱っこされたとき以来だ。もちろんそんな記憶は残っていない。
「ねえ、知冬さん」
「は、はい……?」
「手を繋いでもいいですか」
(はいぃいい!!?)
「そ、それは、ダメです」
「残念」
ふふ、と笑うトノセさん。
笑い事じゃないですよ。なに考えてるんですか。
トノセさんって絶対、女に慣れてるよね。
紳士っぽく見えて案外チャラいの……?
「誰なんですか」
「……だ、誰って?」
「知冬さんの推しは」
さっきイヤホンつけてやっていたゲームの話だろう。
「それは……えっと、『一宮奏多(いちみや かなた)』くんです」
「ああ。かなてぃですね」
おおっと。イケメンビジネスマンの口から乙女ゲームのキャラ名が出るのもいささか違和感があるのに。
それが愛称なのがもう驚きでしかない。
「知冬さんは、年下が好きなんですか?」