【完】溺愛フラグが立ちました。
知り合ったばかりなのにそんなに必要としてもらえるのが不思議でならないし、どこまで本気なのかもわからないけど、私が帰郷することを寂しいなんて言ってもらえるのが素直に嬉しい。
地元に帰ることに――東京を去ることにひとつも未練がないといえば嘘になる。
「……戻ったところで、どうしようもないんです」
住んでいたマンションの契約は解除したし。
引っ越しのトラックは地元へ向かい。
あてもなく舞い戻ることが許される状況でもなくって。
「言ったじゃないですか」
「?」
「就職先をご紹介しますと」
「あ……あれ、本気だったんですか?」
「ええ。きっと気に入ってもらえると思うんです」
トノセさんのその言葉には、私を引き止めるのに十分すぎるほどの力があった。