【完】溺愛フラグが立ちました。



 地元に帰ったところで就職の目処もない。それならトノセさんにお世話になるのもひとつの道で。

 この先まっくらな私にとってそれは有難すぎるお話なのだけれど。


 ほんとにいいの?

 この人について行って……。


「あのっ」

「はい」

「……手、」


 いつまで繋いでいるのかな。

 離すタイミングを完全に見失ってしまった。


「離しませんよ」

「え?」

「私と東京に戻ると、約束してくれるまでは」

「……!」


 そんなこと言われても今ここで決めるわけにもいかないよ。


「とりあえずは。お試し期間ということでどうですか」

「研修期間……ですか?」


 考える猶予は与えてくれるってことなのかな。


「絶対に満足させる自信があります」

「ま、満足?」

「知冬さん」

「はいっ」

「『推し変』してください」

「……へ?」


 『推し変』とは、文字通り推しをチェンジすることなのだが。


「誰から……誰に、ですか?」


 胸がざわつく。


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