【完】溺愛フラグが立ちました。


 このままトノセさんと東京に戻ったら、どんな暮らしが待っているんだろう。

 夢に挫折したフリーターが、あの街でなにをできるんだろう。


「知冬さんは、どんな絵を描かれているんですか?」

「え……」

「是非とも、見てみたい」


 そんな見せられるようなものでもない。なんて思ってしまう自信のなさも、私の敗因のひとつなのだろう。

 過去に自分が描いた作品を見返すことができない。一枚一枚に思い入れはあって描いた当時はそれが全力だった。

 だけどそれらを求められなかった。


 それで、絵を描くことが……嫌いになった。


「もう絵は描きません」

「そんなこと言わずに、描いてくださいよ」

「なんのために」


 そういったあと、自分の感じの悪さに嫌気がさした。


「っ、すみません……」


 こんなの、ただの八つ当たりだ。子供みたい。


「私のために」

「!」

「私が見たいってだけじゃ。絵を描く理由にはなりませんか」

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