【完】溺愛フラグが立ちました。
最優秀賞を勝ち取った人の作品は、やっぱり誰が見ても輝いているような素敵なイラストだった。
「私、少しホッとしてるんです。母に帰ってこいといわれて。そうでもなきゃ、絵から離れられなかったかもしれないので」
昔は絵を描くことに口出しされて喧嘩になったこともあった。そんな母に絵をやめるきっかけを作られて安心するなんて当時の私は考えもしなかっただろう。
「こんなこと言っちゃなんですが。知冬さんは血の滲むような努力、しましたか?」
「……!」
「どこか諦めモードでエントリーしたんじゃないですか。だから他の熱意ある作品が選ばれてしまった」
「そんなこと……ないです」
「見ればわかると思いますよ。その絵にどれほどの力が入れられたか」
口調こそ変わらず穏やかに話しているのに、中身がまるでさっきまでのトノセさんが言いそうな台詞でないことに動揺してしまう。
それと同時に、イライラしてしまう。
貴方がなにを知ってるんですか。
出逢ったばかりの、他人の貴方がっ……。
「私は頑張った」
「『頑張った』というのは本人が決めることではないです。周りが評価するものです」
「……なにがいいたいんですか」
「あなた、未練あるんじゃないですか」
「!!」
「描きたくて仕方ないんでしょう?」