【完】溺愛フラグが立ちました。
「たかが、スマホアプリ。されどスマホアプリ」
にっこりと微笑む男。
(は……はい!?)
「スマホだと侮ってもらっちゃ困る。中身は本格的。美麗なイラストに、豪華な声優陣。季節ごとに追加される限定ストーリー。それが一部課金アイテムを買わなければ無料で遊べるなんて驚きですよね」
貴方のおっしゃることは、よくわかります。わかりますとも。
なにせ高校時代から乙女ゲームにドハマリして現実世界で恋愛をこじらせてしまったくらいの女ですから。
お給料日がきたらとりあえず課金していますから。
相当な数をプレイしてきましたし。スマホ版の乙女ゲームがハイクオリティで素晴らしいと痛感している。
だけどちょっと待って。
「……っ、返してください」
「ああ。失礼」
そういって、大きな手に包まれたイヤホンを、私の掌の上へとそっと戻した男。