【完】溺愛フラグが立ちました。
停電の原因は、どこかのトンネルの漏水が架線にかかったとかなんとかニュースで報道されていた。
数万人規模の多くの人に被害が生じたが、犠牲者が出たわけでなかったのが救いだった。
『それじゃ、今はもう実家なんだ?』
「っ、」
突然腰にまわってきた手に、ビクリと身体が反応してしまった。
『知冬……?』
「うん。そうだよ」
――嘘を、ついた。
だって。だってね。
絢に今の私の状況を言えるわけないから。
伝えるにしても、心の準備が必要なわけで。
『疲れたでしょ。ゆっくり休んでね』
「ありがとう、絢。わざわざ電話ありがとう」
『いつかそっちに遊びに行くから。そのときは、案内してよ?』
「……あ、えっと」
『美味しいたこ焼き食べられるお店連れて行ってね』
『……うん……』
――出逢って間もない男とホテルにいるだなんてことは。