【完】溺愛フラグが立ちました。



 重ねられた唇に、どう反応していいかわからない。


 昨夜、あんなに繰り返した行為なのに。


 キスに上手い下手があるって聞いたことがあるが、きっと私はとんでもなく下手で。

 トノセさんは……上手い。


 角度を変えて丁寧にキスしてこられる。

 何度も、何度も。優しく。


 と、油断していたら

 あたたかく、とろっとしたものが口内に侵入してくる。


「っ、」


 ねえいつ息をすればいいのかな。

 わからないよ……。


「知冬」

「……?」


 そっと離された。唇が。


 私を見つめるその鋭い視線に捉えられると、もう目をそらすことができない。


「知冬、エロい」

「はっ……!?」

「誘ってる? あんなにたくさん可愛がってあげたのに。まだ足りないんだ?」


 片方の口角を上げ、ニヤリと笑う色男。


「ちがっ……断じてそんなつもりは……って、トノセさん……?」


 これから仕事でしょ。

 だからもう、

 準備万端なスーツ姿になってるんでしょ?


 なのに、えっと、上着を脱いで……

 自然とベッドに押し倒してくるのはなんでですか。


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