土方歳三の熱情
「ゴキブリだけがダメなのか? 他の虫も苦手か?」

土方さんは穏やかな表情で、
やはり鋭い目つきのままたずねる。

「虫が……全般的に苦手です」

「そうか。まぁ俺達と違って京の都の育ちだからな」

軽く微笑みながらそれだけ言うと土方さんは立ち去る。

「あぁ、笑ったりして悪かったな」

島田さんは大きな体を縮こまらせて申し訳なさそうにしている。

「いえ、構いません。
男のクセに虫が苦手なんておかしいですよね」

「いや、わし等は田舎者だから、京で育てば虫が苦手になるのかも知れん」

「それにしても、土方さんに注意されると皆さんピタリと笑うのをやめましたね」

「あぁ、そりゃあ土方さんだからな」

「鬼の副長って言われてるって聞いたことはありますけど、そんなに怖そうには見えないんですけど」

「バカヤロウ、そりゃおまえが何も知らないからだ。あの人は本当にすごい人だぞ」
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