土方歳三の熱情
「蛾ならもうどっか行ったぞ」

土方さんが話すとその息遣いまで伝わってくる。

私は自分が今どういう状態なのかすら分からなくなってしまっている。

「よいしょ」

土方さんは私の体を起こしてくれる。

私はやっと体に力を入れることを思い出して自分の足で立つ。

「すいません、取り乱してしまって」

「気にするな。おしるこはまだまだあるから代わりをよそってやろう」

島田さんが優しい口調で言いながら
新しい丼に硬くなり始めた水あめの塊をムリヤリ盛り付けている。

見ると私の足元にはさっきまで私が持っていた丼鉢がひっくりかえっている。

「さすがにこれは、食べずにすますわけには……」

新しい丼を受け取った私がつぶやくと、
土方さんはまだ私の体に手を添えたまま体を震わせて笑っている。
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