土方歳三の熱情
「なぁに、気にするな。
私も滅多に弟子は取らんが、
あれだけ剣を遣うのだから体術の方も見込みがある。
特別に師匠になってやろう」

「お気持ちはありがたいのですが、
武田さんほどの方に基礎の基礎から教わるのは申し訳ありませんから、
まずある程度まで修練を積んでからということで」

「いやいや、中途半端なヤツに教えられて変なクセがついたら余計に時間がかかる。
まぁいいから今から私の部屋に来なさい」

武田さんは私の手首をつかんで引っ張る。

私はグッと踏ん張り、助けを求めようと木村さんの方を見るがいつの間にか木村さんはそこにいない。

あれ、木村さんはどこに行ったのだろう?
と思っていると武田さんが手首をグイと引っ張り私の背後から両腕を羽交い絞めにしてくる。

「ほら、こういう風にされた時にどう対処するかも知らんだろう。
それでは新撰組の隊士は勤まらんぞ」

「ちょっ、やめてください」

私は武田さんの腕を振り払おうとするが力の差は歴然でどうにもならない。
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