土方歳三の熱情
「見たいだろ? オレの胸の筋肉」
なんでこんな何の役にも立たなさそうな肉体だけが自慢のアホが新撰組にいるのだろう?
私に殺される前にさっさとどこかで殺されていればよかったのに。
私の体を力ずくで引き寄せようとした瞬間に刀を抜いて一瞬で殺す。
私がそう決意を固めた時に大きな声が響いた。
「町野! その手を離さんか!!」
声のした方向を見ると、
そこには毛がさか立つほどの怒りの表情で大男をにらみつける土方さんがいる。
町野と呼ばれた大男は慌てて手を離すと、
内股になってブルブルと震えだす。
「えぇぇ? えぇぇ? 悪いことしてません、オレ」
「このド阿呆!! 篠田の殺気にも気づかんのか!」
「えぇぇ?」
「おまえ今、殺されそうになってたんだぞ!」
「えぇぇ? でもこいつとオレとは、でも」
「でもなんだ? 話の内容によってはオレがおまえを殺すことになるかも知れんぞ、町野」
「あぁぁ、はい、そういうことですね、はい」
その小さな脳ミソで何をどう理解したのかは不明だが、
とにかく町野は頭を可能な限り低く下げてほとんど四本足で逃げるように去って行く。