土方歳三の熱情
「どうだろ。オレが知るかぎり、女にはとにかく手の早い人だからね。
たぶん男にも手が早いんじゃないかなぁ」

篠田と土方さんは男色の関係にあるという噂だけを立てて私の体には触れさせない、
というわけにはいかなさそうだ。

家に行ってもむこうから迫ってこないでいてくれるならなんとかなるのだけれど、
実際に土方さんに迫られたら拒める自信が私にはまったくない。

やっぱり土方さんの家に行くのは危険すぎる。

「そうだ! 土方さんが篠田にオレの家に通えって言ったっていう噂を流してくださいよ。
それならもう誰も私に迫ってきたりできないですよね」

「いやだよ」

「なんでですか?」

「だって、土方さんが怒るかも知れないだろ」

「でも現に土方さんはそう言ったんですよ、
ウソの噂をでっちあげるわけじゃなくて事実を言いふらすだけですよ」

< 55 / 72 >

この作品をシェア

pagetop