土方歳三の熱情
突然あらわれた蛾に驚いて転びそうになった時、
気がついたら私は土方さんに抱きかかえられていたけれど、
それまで自分がどういう姿勢だったのかも
土方さんにどんな体勢で受け止められたのかも分かっていなかった。
あの時、土方さんは私の体に触れていたと言われれば確かにそうかもしれない。
転びそうになる人間を背中にしか触れずに抱きかかえることなんて考えにくいのだから。
「オレに女だとバレていることに全然気づいてなかったのか?」
「……はい。疑われてるのかなぁとは思ってましたけど……」
「そうか!? いつそう思った?」
「木村さんと組を組まされた時です。
私の行動を監視させようとしてるのかと思って……」
「ははは、そうか。たしかに不自然だもんな」
「はい」
「あれは篠田の身に危険が及ばないようにするためだ」
「?? どういうことですか?」
「最初に、入隊前の立ち合いを見た時に、オレは篠田伊之助に心を奪われてしまった。
まぁ一目惚れだな」
気がついたら私は土方さんに抱きかかえられていたけれど、
それまで自分がどういう姿勢だったのかも
土方さんにどんな体勢で受け止められたのかも分かっていなかった。
あの時、土方さんは私の体に触れていたと言われれば確かにそうかもしれない。
転びそうになる人間を背中にしか触れずに抱きかかえることなんて考えにくいのだから。
「オレに女だとバレていることに全然気づいてなかったのか?」
「……はい。疑われてるのかなぁとは思ってましたけど……」
「そうか!? いつそう思った?」
「木村さんと組を組まされた時です。
私の行動を監視させようとしてるのかと思って……」
「ははは、そうか。たしかに不自然だもんな」
「はい」
「あれは篠田の身に危険が及ばないようにするためだ」
「?? どういうことですか?」
「最初に、入隊前の立ち合いを見た時に、オレは篠田伊之助に心を奪われてしまった。
まぁ一目惚れだな」