土方歳三の熱情
「……分かった。
じゃあいったんこの前オレが言った二つの選択肢は忘れてくれ。
単純に、おまえはどうしたい?
おまえが一番したいようにしてやろう。
今ここでオレを斬りたいか?
それともオレに斬られたいか?
二人で一緒に死にたいならそれもいい。
言ってみろ、おまえはどうしたい?」

「私は……」

「私は?」

「絶対に許されることではないって分かってるけど……
このまま土方さんと離れたくない」

「でも家族を死なせたくはない」

「はい。無理なことばかり言ってごめんなさい、
でも私はあなたを必要としています。
この数日ここで過ごして、よりいっそう強くあなたを必要とするようになってしまいました」

「そうか……実はオレも同じような気持ちだ」

「同じような気持ち?」

「あぁ、昨日までの数日で分かったんだ。
オレは、おまえと居る時だけ本当のオレに戻れる。
心の張りを緩めて穏やかに過ごせる、
こんな気持ちになるのがいつ以来なのかも思い出せない。
つまり……オレだっておまえを必要としているってことだ」

それは思いがけない言葉だった。
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