土方歳三の熱情
父が止めるのも聞かず強引に伊之助の身代わりとしてここに来たのは、
剣の腕に自信があったからであって他の事はあまり考えていなかった。

今になって私はいろいろと考えなくてはならないことに気がついた。

「大風呂は早い時間帯に入らないと湯が真っ黒によごれちまうから、
そういうのが気になるなら早めに入った方がいいぞ」

島田さんは親切に細かいことまで教えてくれるけど、
こっちはどうやって女だとバレないようにするか考えるのに忙しい。

「私は風呂は嫌いです。
たまに湯をもらって部屋で体をぬぐうだけで十分です」

「おおそうか! オレと一緒だな!」
島田さんは嬉しそうに言う。

そういえば島田さんの体からは野生のイノシシのような臭いが漂っている。

大風呂に入るわけにはいかないから部屋で体をぬぐうだけにしておいて、
昼間に自由時間があれば急いで家に帰ってお風呂に入ろう。

そう考えながら、私は頬がひきつるのを隠しつつ島田さんに微笑み返す。
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