土方歳三の熱情
私が土方さんのためにできることなんて何もないと思っていたから、
少しでも土方さんの心の安らぎになることができるなら、
それより嬉しいことなんてない。

「うーーん」

土方さんは考えをめぐらせながらうなっている。

土方さんのうなり声が止んだ瞬間、
土方さんの右手はすばやく私の腕をつかんで強く引き寄せる。

気がつくと私は土方さんの腕の中にいる。

「運命の愛というのはいきなり訪れるものらしい。
何の前ぶれなく、何の準備もしていないところに。
突然に、しかし確実に」

私は土方さんの腕の中で、
土方さんの体温を感じながら彼の出した結論を待つ。

「新撰組では随分と危ない橋も渡ったが、
実のところオレは準備もせずに危険をおかしたことなど一度もない。
戦いというのは常に準備をしっかりした方が勝つものだ。
しかし男女の仲はそうはいかないようだ。
運命は何の準備もないところにいきなり訪れる、そういうものらしい。
それを危険だからと避けていては、幸せを遠ざけることになってしまう」
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