土方歳三の熱情
たしかに、そうかもしれない。

私は土方さんの息遣いを感じながら心の中で同意する。

「それなら何の準備もせずに、
そのまま流れに乗るしかないということになる」

流れにのる?

どういう意味だろう。

私は何も考えずに土方さんの腕に身を任せてしまいたい気持ちをなんとか抑えて考える。

「オレ達の関係はこのままだ。
オレ達は何も選ばないし何も諦めない」

「つまり……
私は遠くの町には行かないし家族を死なせたりもしない」

私はほとんど吐息のような声でつぶやく。

「オレを斬ることもないしおまえを斬ることもない。
二人で死ぬこともない。
明日からもおまえはここに通えばいいし、
オレ達は二人でおまえが女だということを隠し続ける。
おまえが女だとバレたら二人とも身の破滅だという状況のままで互いの心と心を包みあう」
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