酔ったら、
そう言って先輩は、また私の方を見る。
やめてほしい。
さっきから三度も吐いてる私の顔を、あまり見ないでほしい。
恥ずかしさのあまりに、手をきゅっと握る。
「ん…?」
きゅっと握ると、何かが手の中に。
何があるのだろうと、視線をそこへ持っていく。
先輩と、私の手が繋がっている。
思わず、ぎょっとした。
寒気もしたくらいだ。
「す、すみません…!酔ってるからです。すみませ-
慌てて、手を振り払おうとしたが、その手も直ぐに掴まれて、先輩の手の中に収まった。
そして、間髪入れずに、先輩は私に問う。
「じゃあ、付き合うなら、年上?年下?」
「え?どちらかと言えば、年上です」
「引っ張られる方が、いい?」
「はい。是非、お相手には、引っ張っていただきたいです」
ふーん、と鼻を鳴らした先輩は、私の手を握り返した。
「じゃあさ…」
次は何を聞かれるのだろう、と身構える。
「俺じゃ、駄目…?」
そんな風に言われたら。
こんなにも親切に介抱してもらったら。
こんなにも優しくされたら。
そりゃ、言いたくもなるじゃない。
「駄目じゃ、ないです」
そして、静かに手を握り返した。