酔ったら、



そもそも何故、先輩は私なのだろう。

可愛い人、綺麗な人なら、いくらでも居るのに。

俯いた私に向かって、先輩は大きく溜め息を吐いた。



「何だよ。来栖の方から突然、食事の誘いがあったから喜んで来たら、お断りの返事か。連絡もらって、浮き足立ってた俺の半日を返せ」

「そんなこと言われても……あのとき先輩の方こそ、酔っ払ってるものだと思って」

「馬鹿言うな。俺の精一杯の告白を無かったことにするんじゃねぇよ」

「精一杯の……?」



先輩が赤くなっているのは、お酒のせいなのか、それとも──。



「何で。私なんですか?」

「変な質問をするな。そんなの、お前が良いからだよ」

「それじゃ、理由になってない」



私が詰め寄ると、先輩は距離を置く様に、背もたれにもたれた。

そして、半分残るビールのジョッキを傾ける。

気持ち良い程の飲みっぷりに目を奪われていると、飲み干した先輩が息を吐き出した。



「やっぱり来栖は、自分のこと見誤り過ぎ」

「え」

「『何で私なのか』とかさ、忘年会のときの『可愛げのない女』とかも。何で、そんな自分のこと下げんの?」

「本当にそう思うからです。男性に好かれた経験もあまり無いし……宮地さんだって、可愛い人のがお好きでしょう。ほら! 受付の花村さんとか。モデルさんみたいで──」

「誰?」

「え! 知らないんですか? あんなに有名なのに。明るくて、人当たりの良い、本当に可愛い子です。忘年会のとき、男性社員に囲まれてたじゃないですか」

「分からん。興味無い」



驚いた。

営業部のエースともあろう人が、自社の有名人を知らないなんて。
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